短編集『秋が降る』

「バイトのあと、なんか会いたいなーって思って」

「ああ・・・うん」

・・・なんか、浮気説が濃厚かも。
なんだか『いきなり来るなよ』って言われてるみたいな気がしてくる。

「・・・ごめん。迷惑だったら帰る」
そう言って、私はすねたような顔をしてみせる。

「い、いや・・・迷惑じゃねーよ」
そう言いながらも拓斗は考え込むような顔。

ああ・・・。
たぶん誰か来るのかも。

思ってたより自分が動揺しちゃってた。

「じゃ、またね」
そう言って私はなるべく笑顔を作って帰ろうとする。

その腕を拓斗がつかんだ。

びっくりするほど強い力。