シオンズアイズ

エリルの森は豊かである。

木には実がなり、鹿や兎がはね、川には丸々と太った魚が泳いでいる。

ファルは川に入ると、岩の上から水中を覗き込んだ。

それから腰の長剣を抜くと、素早く水中に突き刺し、アッと言う間に大きな魚を二匹捕ってシオンを振り返った。

「火をおこせ」

えっ?!

シオンはたじろいだ。

あ、当たり前にできると思われてるみたいだけど、ライターがないと無理だわ、私。

「火なんて私、つけられない」

ファルは一瞬固まったように動きを止めたが、大股で川から上がると石の上に魚を置き、手早く火を起こしながら言った。