だけど、だけど……。

シオンは息を吸うと、思いきって正直に告げた。

「ファル……知ってるでしょうけど私、男の人とそういう経験がなくて……だから怖いし、その……嫌になるかも、私の事……」

「うるさい」

「え」

「俺に抱かれたいかどうかだけを訊いているんだ。答えろ」

ああもう……。

「……抱かれたい、ファルに」

シオンは観念してファルにキスをした。

「ファル、大好き」

ファルは、ギュッと眉を寄せるとシオンを抱き締めた。

「俺も愛してる」

その時、バルコニーから風が流れ込み、ファルとシオンの背中を押すように階下へと吹き抜けていった。

さよなら、七色の瞳。

二人は心の中で、シオンの瞳にそう告げると微笑み合い、長い階段をゆっくりと降りていった。




        ~end~