シオンズアイズ

「あ、あのね、きゃあーっ!」

シオンの言葉も聞かずに突然彼女の身体をすくい上げるように腕に抱くと、ファルは力強い足取りで長い階段を上り始めた。

グッと前を見据えた黄金色の瞳は苛立たしげに光り、そのせいなのか端正な顔は少し冷たい。

シオンは心臓が激しく脈打ち、苦しくなってただただファルを見上げた。

階段の上から風が吹き込んできて、それとは別に騒がしい人々の声と演奏が耳に響く。

「ねえ、ファル」

「…………」

完全に無視だよ……。

ないとは思うけど……このまま階段の一番上から投げ落とされたりして。

…………。

「もうっ!そんなに怒んないで」

至近距離で唇を引き結ぶファルに居たたまれなくなり、シオンは思いきってファルの首に両腕を絡めた。