シオンズアイズ

シオンは焦った。

「ちょっと、待ってっ」

「待てない……」

「んっ」

ファルはシオンを抱き締めたまま、そっと口づけた。

唇を優しく押し当てられ、思わず口を開くと、僅かにファルの舌先が触れた。

「っ……!」

シオンは息を飲んだ。

ファルは、ゆっくりと顔を離してシオンを見ると、思いきって言った。

「俺は、お前を気に入った」

本当は、『好きだ』と言いたかったが、出逢って間もなかったから、言えなかった。

それでも、聞かずにはいられない。

「お前は…俺が嫌か?」

ファルの瞳が誘うようにシオンを見つめる。

シオンは、どう言っていいか分からなかった。

何が何だか分からない間に異世界にきてしまい、そんな自分の目の前に、端正な顔立ちの男が現れたのだ。

しかもわずかな時間にキスをされ、どうやら男は、自分に好意を抱いたらしい。

ファルは、黙りこくってただ自分を見上げるシオンを、マジマジとみつめた。