シオンズアイズ

だって……抱き締められてるだけじゃなくて、自分も相手の体に腕を回し、しっかり抱きついているよーなー……。

眼をあげると、眠っているファルの顔が間近に迫っていて、厚い胸に自分の頬が密着している。

…な、んで?!

分かんないけど、この人が寝ている間に、なんとかして離れ……。

シオンはファルに回していた手を解こうとした。

「離れるな」

「きゃあああっ!」

ファルは至近距離からチラリとシオンを見つめて短く言った。

シオンは焦った。

「で、でも…」

ファルはシオンを抱く手を一瞬緩めたが、態勢を調えて再びしっかりと抱いた。

「しばらくこうしていろ」

ファルは硬い岩肌にもたれ、シオンをすっぽりと胸に抱き締めている。

「だ、だけど」

イライラしたファルが口を開く。

「だけど、なんだ」

シオンは、ファルに抱かれたまま、焦って言った。