シオンズアイズ

「ファル」

マントを翻して皆に背を向けたファルに、マーカスが声を掛けた。

振り向かないファルの足が止まる。

マーカスは構わず続けた。

「シオンはどうする」

ファルは即答した。

「大丈夫だと言ったシオンの言葉を信じる。今、俺がやらなければならない事はひとつだ」

マーカスは、焚き火の炎をマントに映して悠々と立ち去るファルを見つめた。

ファルはいつもそうだ。

自分自身の個人的な話の際には、頭に血を登らせたりと人間臭い一面があるが、国レベルの事柄となるとたちまち変化する。

軍を率いて、自らが先頭にたたなくてはならないような場面では、何があっても動じない。