シオンズアイズ

「きゃあっ!」

ザザッと砂利を鳴らして近づいてきたファルが、突然シオンを抱き上げた。

「マーカス、シオンを借りるぞ」

言うなりマントを翻して彼に背を向ける。

マーカスは、吹き出しそうになるのを必死で堪えた。

「どうぞお心のままに」

……なんだ、その言い回しは!

ファルはマーカスの口調に眉を寄せながら大股で歩いた。

「ファル、なに?!おろして」

「いいから掴まってろ」

その様子を見ていた兵達がニヤニヤしだす。

「王子、まだ明るいですが」

ギロッと睨むと兵達が笑った。