シオンズアイズ

そう言うや否や、香はスッと立ち上がると輪から外れたアルゴへと駆け寄って行ってしまった。

「効果覿面だろ?」

シオンに歩み寄りながら、マーカスは爽やかに笑った。

「分かんないよ」

マーカスは眉を上げて白い歯を見せた。

「分からない?お前、鈍いんだな。言っておくがファルも相当鈍いぞ。アイツは色恋に疎い」

「マーカスは女心に詳しいの?恋人はいる?」

一心にこちらを見上げるシオンを可愛らしく思い、マーカスはフッと笑って口を開いた。

「昔はいた。今はいない」

「ねえ、マーカス」

シオンがここまで言いかけた時である。