マーカスは僅かに頷くと、アルゴと香に眼をやった。

「後はファルに任そう。行くぞ」

香はシオンの手を取ると、ギュッと握り締めた。

「話したいことはいっぱいあるけど……今は休んで」

「ん、後でね、香」

三人が部屋を出ると、途端にファルと眼が合い、シオンはドキッとした。

どうしていいか分からず俯くと、ファルがゆっくりと寝台に近づいた。

フワリと空気が動き、ファルの香りがシオンを包む。

その時、ギシッと寝台が軋んだ。

ファルは、寝台に腰かけた自分を見ようとせず、固い表情のまま瞳を伏せたシオンを見つめた。