シオンズアイズ

「……分かった」

シオンは馬宿に足を向けながら考えた。

どうしよう、アーテス帝国になんか行きたくない。

行けば一生ファルに会えない気がする。

このまま馬に乗って逃げようか。

けれどもうすぐ夕方だ。

土地勘もないし、暗くなると進めない。

ああ!どうしたらいいの!?

その時である。

「おい」

屋敷の出入り口を出たところで、野太い声がした。

振り返ると、兵士が一人こちらを向いて笑っていた。

「あなたは……」