シオンズアイズ

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「明日の朝、アーテス帝国に帰る」

庭で摘んだ花を花瓶に生けようとしていたところであったが、シオンはカイルのその声に僅かに息を飲んだ。

……行きたくない。

アーテス帝国へ行けばいまよりも一層、ファルと離れてしまう。

シリウスに刺された足は、多少の違和感が残るものの生活に支障はない。

馬にもなんとか乗れる。

……逃げるなら、今かもしれない。

「ねえ、シオン」

急に耳元で名を呼ばれ、ビクッと跳ねそうになる身体を、シオンはなんとか抑えた。