シオンズアイズ

「いくわよ!」

言うや否や、香は手綱をさばいてマーカスに背を向け、十数メートル駆けると、再び馬を返して彼に向かい合った。

「いつでも」

マーカスの声が響き、互いに剣を構えて駆け出した。

瞬時に距離が縮まり、二人の剣が十字に重なると共に、硬い音が辺りに響き渡った。

な、なんだ、コイツは……!

マーカスは香の剣さばきに眼を見張った。

……俺の剣を受け止めるだけでなく、勢いよく弾き飛ばすと全く別の場所へと素早く攻撃を仕掛けてくる。

しかも両手利きか!?

当たり前かのように左右の手で剣を持ち替え、激しく斬り掛かってくるが、香は息も乱さない。

彼女の打ち込む剣は重く、男のマーカスであっても歯を食い縛らねばならないくらいだ。

アルゴは息を飲んで馬上の二人を見つめた。

「おい、嘘だろ?マーカスの汗を見てみろ」