シオンズアイズ

香は、窓から見えた男の上半身を見て、息が止まる思いであった。

クラッと目眩がして、思わず眼を閉じたあと、再び眼をやる。

ああ、剣清!

香は茂みの間に隠れながら、シリウスの冷たい美貌を見つめた。

香には、すぐに分かった。

かつて自分の恋人であった剣清が、輪廻転生し、シリウスとなって再び現れたことを。

「ああ、ホントだね。今晩の月はやけに明るくて、とても綺麗だ」

シリウスはそう言いながら暫く月を眺め、最後に辺りを見回しながら幕を閉め、部屋に消えた。

香は早鐘のような心臓を感じ、大きく深呼吸すると身を起こした。

『君、名前は?俺は剣清(けんせい)』

『静麗(ジンリー)、愛してる』

『静麗、俺の傍に一生いろよ』

月が歪んだ。

頬に何かが伝う。

香は息を殺して泣いた。