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数時間後、香は動き出した。

月がやけに明るいが、仕方がない。

新月まではとてもじゃないが、待てなかった。

下げていた水袋を外し、腰の左側に短剣を吊すと、香は大きく息をした。

シオン……七色の瞳の乙女には、自分の傷を治癒する力はない。

自分の怪我や病を治す力はごく普通の人並みなのだ。

血を流しすぎると、死に至る。

香は月を見上げた。

シオン、頑張って。

助けに行くから。

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「やめてください!」