それでもアイーダは、女神に殺されて初めて幸せだと思った。

王子ファルを愛してしまった。

彼を、自分のものにしたい!

その唯一の方法を、彼女は知っているのだ。

昔、人間だった頃に自国に伝わる伝説を、アイーダは信じていた。

…何処にいる、七色の瞳を持つ乙女。

七色の瞳の乙女は、どんな願いも叶える力を持っているのだ。

それゆえに、私利私欲にまみれた数多くの者達にその存在を狙われる。

見つけなければならない。

アイーダは、足元にキラリと光る一本の針を見つけて、ニヤリと笑った。

拾い上げると、ふっくらとしたバラ色の唇にそれを押し当てて眼を閉じた。

何としてでも見つけるのだ、七色の瞳の乙女を。

生き返り、この恋を成就させる為に。

アイーダは、腕にはめたユグドラシルの樹で作られた腕輪をシャラリと揺らし、徐々に透明になるとその美しい姿を消した。