恋する白虎

「あんな根暗、ほっとけ」

ね、ねくら……。

「ネクラで悪かったな」

急に背後から低く響く声がして、杏樹はビクッとした。

「エ、エイシュンさん」

永舜は、兄の膝の上の杏樹を荒々しく引っ張ると、よろけた杏樹をがっしりとした腕で支え、そのまま肩に担ぎ上げた。

「きゃああっ」

「杏樹は返してもらう」

言い捨てるなり踵を返して屋敷へと歩き出した。

「おいおい、永舜」

永蒼は舌打ちした。

百年見てない間に、自己主張するようになったのか、アイツは。

俺から女を取り返しにくるとは。

永蒼は杏樹を担いで去っていく永舜の背中を見つめながら思った。

まあ、いい。

杏樹が惚れるのは……。

永蒼は、池に落ちる草の露を見て、唇を引き上げて笑った。