永舜は、土気色の杏樹を見て、胸が避けそうな痛みを覚えた。

白銀の虎に変わると前肢で杏樹を抱え、急いで空を翔て帰り、自宅のベッドに横たえる。

「杏樹、杏樹!」

心音は、聞こえる。

だが、よわい。

「杏樹」

ダメだ、早く薬を……。

永舜は、首にかけている貴石を革紐から器用に外すと、渾身の力で握り潰し、その粉を水と共に含み、口移しで杏樹に飲ませた。

古くから白虎に伝わる、あらゆる毒を中和する万能薬である。

永舜は、グッタリとした杏樹の体を優しく抱いた。

薬さえ効けば、数時間で意識は戻るはずである。