窮奇は、ハハッと笑った。

俺も涙を流したりするんだな。

くっ、笑わせるぜ、四凶の俺がよ。

窮奇は、昨日を思い出した。

杏樹の眠る寝台に横たわり、彼女を抱き締め、声をかけた。

「なあ、杏樹。
俺は、人を食うんだ。
悪い奴なんだ。
窮奇だからよ。
お前がそれを知ったら、お前は俺を嫌いになるだろーな。
けどよ、俺はどーやら、お前に惚れちまったみたいだぜ。
お前といると、こんな俺でもマトモになれるんじゃないかって、思えたんだ。
真っ直ぐに俺を見てくれるお前を、離したくなかったんだ。
悪いな、杏樹。
お前をこんな目に遭わせちまってよ。
夜が明けて、門が開いたら俺達はお別れだ。
頼むから、死ぬなよ。お前には生きてて欲しいんだ」

杏樹、もうお別れだから許せよな。

窮奇は杏樹を抱き締めて、その唇に口づけをした。