自宅アパート前に到着した車。
毎回思うのが、どのタイミングで車を降りたらいいのか分からない。
彼から『おやすみ』と言って貰えたら、降り易いのに。
膝の上で抱えている鞄の持ち手をギュッと握り、意を決して彼の方に視線を向けた。
すると、
「ん」
「へ?」
『おやすみなさい』と言おうとしたのに、その言葉さえも一瞬で消え去った。
だって、突き出された彼の手のひらには―――――。
「やるよ」
「えっ、でも………」
「要らねぇの?」
「ッ?!………要ります!」
彼の手のひらには、見覚えのある鍵が乗せられていた。
1カ月ほど前に引ったくりに遭って失くしてしまったのと同じモノ。
私は彼の手のひらから遠慮がちにそれを掴むと。
ッ?!!!
私の手ごと掴んで抱き寄せられてしまった。
暖房が効いている車内だから?
突然の行動に驚いたから?
理由は分からないけど、心臓が物凄い速さで暴れ出す。
空いてる方の手がスッと現れ、顎をクイッと持ち上げた。
「なぁ」
「……………はい」
鼻先が触れそうな距離で見下ろされる。
彼の吐息がシャワーのように降り注ぎ、30分程前にしたキスの感覚が甦る。
不本意ながらも既に脳内へメモリされた彼とのキスがあまりにも鮮明で……。
これも、この男の手口なんだと分かっていても………無意識に顔が上気し出した。
すると、



