厚焼き玉子を口に含んだ彼が、一瞬眉根を寄せた。
それを見逃さなかった私。
思い切って尋ねてみることにした。
「あの?」
「……ん?」
「玉子焼き、不味かったですか?」
「………いや」
「でも………、あまり美味しそうに召し上がってないように思いますけど……」
自分でいうのもなんだが、あからさまに『不味い』と言われるもの嫌なものがある。
けれど、目の前のこの男には常識は通用しない。
どれ程の毒をお返しに突き付けて来る事やら……。
内心ヒヤヒヤしながら彼の言葉をじっと待っていると。
「普通に旨いと思うよ?」
「へ?」
彼の意外な言葉に驚き、唖然としてしまった。
けれど………。
「ただ……」
「………ただ?」
「俺はノーマルの甘めが好きだ」
「…………」
あぁ、なるほどね。
しらすから出る塩気と出汁で作るような厚焼き玉子じゃなくて、子供が好むような甘いタイプね。
厭味というには味気なさを感じるほどの言葉にホッと胸を撫で下ろすと、ご飯茶碗を少し持ち上げて。
「粒も立ってるし艶もある。一般的に考えたら旨いご飯だろうけど、俺はおこわみたいな硬めのご飯が好きだ」
「………」
「それから、この味噌汁は出汁が効いてて旨いが、なめこはあまり好きじゃない」
「………」
「それに、ロールキャベツは意外と好きだけど……」
「コンソメスープがお好きでしたか?」
彼が言わんとする事が何となく予想出来て、思わず口を開くと。
「いや、クリームソースの方が好きだな」
「………」



