勝手に百人一首

永遠のように長く、瞬きよりも短い時間だった。





何度抱き合っても、何度くちづけを交わしても足りないくらい、二人は互いを求め合った。





いつの間にか東の空がほんのりと明るんで、澄んだ水色が広がっている。






「…………もう、朝か……」






レイモンドは乱れた髪を掻き上げ、エレティナの裸の肩に自分のマントをかけてやる。





疲れて眠りこんだエレティナの顔は、幼い頃と変わらず、無垢で可憐なものだった。





思わず口づけを落とし、起こさないようにそっと抱きしめる。






(………だめだ)






レイモンドの胸に、突き上げるような思いが去来した。






(たった一度だけでも、想いが遂げられたら、それでいいと思っていた。



でも……無理だ。


やっとのことで手に入れた宝物を、自ら手放すことなど、できるはずがない………)