勝手に百人一首

「この身は、この一生は、神ではなく、あなたに捧げたいの………」







震える声でエレティナが言った瞬間、レイモンドは満身の力で彼女を抱きしめた。







「………エレティナ。


俺のものになってくれるのか」







あまりの力強さに息が止まりそうになりながら、エレティナは掠れる声で答える。







「ええ、そうよ。


だからあなたも、私のものになって……」







誰にも気づかれないように心の奥底にしまいこんで、自分にさえ見えないようにひた隠しにしてきた想いが、音を立てて弾けた。





一度溢れ出したものは、もはや誰にも止められない。





もちろん、その想いの持ち主にさえ。






ーーー細い月明かりが幾筋も射し込む東屋の中。





長い間、静かに密かに想い合っていた二人は、初めて結ばれた。