勝手に百人一首

ーーー今井くんの声だった。





大人っぽくて、いつも落ち着いていて、声を荒げたりすることのない今井くんが、




初めて聞く大声を上げた。






みんなが驚いたように今井くんを見た。





あたしもちらりと顔を上げて、視界の端に今井くんの姿を捉える。






さっきまで気まずそうに顔を背けていた今井くんが、今はまっすぐ前を見て、みんなの視線を堂々と受け止めていた。







「あら今井くん、偉い!!

いいこと言った!!


そうよ大石くん、服部くん、授業の邪魔しないでね」






先生は大石くんと服部くんを睨みつける素振りをして、百人一首の説明に戻って行った。





みんな、熱が引いたようにノートをとりはじめる。





あたしはもう一度、今井くんのほうに視線を向けた。






ーーーあ。



目が合った。






その瞬間、今井くんはぱっと目を逸らした。