勝手に百人一首

「…………お前、すげーな。


なんだよその豹変ぶりは?」






佐藤が目を丸くしてあたしを見ている。




鳩が豆鉄砲くらったような顔。






「んー、なんかねー、目から鱗ってゆーか、憑き物がとれたってゆーか、一肌脱げたってゆーか、そんな気分?」






「………ほう、そりゃめでたい」







佐藤はうんうんと頷いて、「まぁ呑め」とあたしのグラスに日本酒をついだ。






「ありがと」






あたしはそれを一気に喉に流し込んだ。





佐藤はくすくす笑いながら、自分も酒をあおった。






「………ま、ご縁がなかったってことだ。


つーか、二股かけるようなしょうもねえ男だってことに、早く気づいて良かったじゃん。


騙されたままオバサンになってたら、お前の人生無駄にするとこだったな」







励ますように言った佐藤の言葉。





それを聞いた瞬間、なぜか、







ーーーあたしの涙腺は崩壊した。