勝手に百人一首

「…………逃げ切れるだろうか?」






エレティナに手を引かれて立ち上がりながら、レイモンドが眉をひそめる。




エレティナは「大丈夫よ」と自信ありげに笑った。






「あなたは幼い頃から、誰よりも馬の早駆けが得意だったじゃない。


それに、私はその次に速かったわ。


近衛兵たちは皆、あのころ共に遊んだ貴族の男の子ばかり………誰も私たちには敵わないわよ」






そんなに上手くいくだろうか、という不安も、レイモンドにはもちろんあった。





しかし、エレティナの弾けるような笑顔を見ていると、どうにでもなるような気がしてきた。







「…………やっぱりエレティナは、最高だよ」






レイモンドはとうとう噴き出して、エレティナを抱き上げた。





そしてそのまま、城壁の傍らにある馬屋へ向かって駆け出した。