「城で急ぎの用ゆえ、私とわずかな供の者だけで一足先に戻るのだ」
「急ぎの用ですか?」
「そなたはもうしばらくここ大沼に滞在し、次の知らせを待っていればよい」
「知らせ?」
「今度こそ……そなたは私のものだ」
急ぎの用や知らせとは何のことか、冬雅は姫に何も告げず。
姫の髪を愛おしそうに撫でて、そのまま立ち上がり退出していった。
宴はそれをもってお開きとなってしまった。
「……」
妙だと姫は思った。
急に福山城へ戻ることになった冬雅。
「叔父上、殿は今晩中に福山城へ戻られるそうですが」
側近である安藤の叔父に聞いてみたのだが、
「何だと。私は聞いてはおらぬぞ」
叔父はたいそう驚いた。
「福山城で何かあったのでしょうか」
一部の側近しか伴わず、慌てて城へ引き返した冬雅。
「分からぬ。何かあったのなら、我々重臣たちにも話があるはずだが」
突然姿を消した福山冬雅。
(何のために慌しく福山城へ?)
状況が分からなかった。
姫は不吉な予感を覚えた。
「……」
外の木々が夜の闇の中、風でざわざわ音を立てていた。
「急ぎの用ですか?」
「そなたはもうしばらくここ大沼に滞在し、次の知らせを待っていればよい」
「知らせ?」
「今度こそ……そなたは私のものだ」
急ぎの用や知らせとは何のことか、冬雅は姫に何も告げず。
姫の髪を愛おしそうに撫でて、そのまま立ち上がり退出していった。
宴はそれをもってお開きとなってしまった。
「……」
妙だと姫は思った。
急に福山城へ戻ることになった冬雅。
「叔父上、殿は今晩中に福山城へ戻られるそうですが」
側近である安藤の叔父に聞いてみたのだが、
「何だと。私は聞いてはおらぬぞ」
叔父はたいそう驚いた。
「福山城で何かあったのでしょうか」
一部の側近しか伴わず、慌てて城へ引き返した冬雅。
「分からぬ。何かあったのなら、我々重臣たちにも話があるはずだが」
突然姿を消した福山冬雅。
(何のために慌しく福山城へ?)
状況が分からなかった。
姫は不吉な予感を覚えた。
「……」
外の木々が夜の闇の中、風でざわざわ音を立てていた。



