「行くな、真姫!」
圭介が止めるのも聞かず、真姫は駆け出した。
真姫の向かう先は庭園ではない。
ここ福山城と隣接した公園。
そこに植えられた、「薄墨」という木の元へと走っている。
(薄墨は、福山冬悟の魂が眠る木……)
圭介は真姫を追いかけたが、ケガの影響で以前のようには走れない。
まだ恐怖心が払拭されていない。
見かねて麻美が先に行ってくれて、圭介も必死で後を追う。
真姫は一目散に、「薄墨」の方角へと向かっている。
この辺りの土地勘はないはずなのに、迷うことなくまっしぐらに。
「吉野くん、こっち!」
圭介は一歩先に走っていた麻美の元へたどり着いた。
麻美が指差す方向を見ると、真姫は「薄墨」という木に語りかけていた。
「冬悟さま。再会の約束を果たしにまいりました」
(姿形は真姫なのに、これは真姫じゃない。月光姫が真姫の体を借りて、行動しているんだ)
「冬悟さま……。あの時は離した手をどんなに悔やんだことか。もうお側を離れません」
真姫は薄墨の幹へと近づく。
だがこの木は、国の天然記念物。
木を囲む柵の中に侵入し、木に触れることはできない。
にもかかわらず真姫は柵を越えて、木に近づこうとする。
「だめだ!」
圭介は真姫を掴んだ。
圭介が止めるのも聞かず、真姫は駆け出した。
真姫の向かう先は庭園ではない。
ここ福山城と隣接した公園。
そこに植えられた、「薄墨」という木の元へと走っている。
(薄墨は、福山冬悟の魂が眠る木……)
圭介は真姫を追いかけたが、ケガの影響で以前のようには走れない。
まだ恐怖心が払拭されていない。
見かねて麻美が先に行ってくれて、圭介も必死で後を追う。
真姫は一目散に、「薄墨」の方角へと向かっている。
この辺りの土地勘はないはずなのに、迷うことなくまっしぐらに。
「吉野くん、こっち!」
圭介は一歩先に走っていた麻美の元へたどり着いた。
麻美が指差す方向を見ると、真姫は「薄墨」という木に語りかけていた。
「冬悟さま。再会の約束を果たしにまいりました」
(姿形は真姫なのに、これは真姫じゃない。月光姫が真姫の体を借りて、行動しているんだ)
「冬悟さま……。あの時は離した手をどんなに悔やんだことか。もうお側を離れません」
真姫は薄墨の幹へと近づく。
だがこの木は、国の天然記念物。
木を囲む柵の中に侵入し、木に触れることはできない。
にもかかわらず真姫は柵を越えて、木に近づこうとする。
「だめだ!」
圭介は真姫を掴んだ。



