新撰組綺談~悠月ナ草~





「千秋ちゃんらしい名前のつけ方ですね」


「豆助、よろしくねっ」



そう言い、豆助の鼻をゆびでつつくと、

ピー!っと豆助が元気に鳴いたのであった。






数分
豆助と遊んでいると。

沖田が不意に話しかけてきた。





「もし」



「え?」



突然、沖田が難しい顔をして見つめてくる。





「もし、俺に何かあった時、
この豆助を俺と思って可愛がってあげてくださいね」





「………………突然なんですか、どういうことですか?」


突然の沖田の発言に千秋は驚きを隠せない。

(何かあったときって……
この間みたいに浪士に斬り掛かられそうになったり……ってこと?)



いきなりの沖田からの発言を、千秋はすぐに理解できない。





沖田は強い。



とても強い。



だが……生きている以上、何があるかわからない。
もしかしたら、沖田より強い不逞浪士がいるかもしれない。

そんな浪士たちに大人数で絡まれたら。



千秋は考えるだけで背筋に嫌なものが走ったような気がした。



「いや、まあ、そういうことです」


沖田は普段どうりニコっと笑い、言葉をにごし、そう言い、立ち上がって出ていこうとする。


「そういうことってどういうことですか!?沖田さんはそばにいて下さい!!」


そう言うと、沖田は少し切なそうな顔をした





「……千秋ちゃん、おやすみなさい」


千秋に返答することなく、部屋を出て行ったのであった。











――――――――――――――――。






―――――――闇が街を包む。


…俺の両親は、早くに流行病で亡くなった。


生きるすべもわからなかった頃、

――俺は飢えで死にそうな時に近藤さんに拾われた。



近藤さんがいなかったら今の俺はなかったと言えるだろう。






――――だから、俺は新選組を守り抜くと、近藤さんからもらったこの剣に誓った。




――――――だからこそ俺は



――…俺は。








………近藤さんの為なら命を落としたっていいと思っているんだ



だけど……




なぜ、千秋ちゃんの笑顔を想像すると

こんなにも胸が苦しいのだろう























「総司、剣は持ったな。……行くぞ!!!」



真夜中。







人一人いない紫前町。







月の光に浅葱色の隊服が美しく、揺れる。







剣を刺し





組員を従え




二人の組長と土方……いや、副長は







颯爽と街を駆け抜ける。










―――”人斬り”討伐作戦を開始する――――