勢いよく、風呂敷をもって町に飛び出したはいいが………
「迷ったああああ!!!」
紫前町は、現代と違って似たような木造だての建物が綺麗にまっすぐ並んでいる。
(この時代の建物、皆似たような建物だからどことおったか忘れちゃうよ…!)
交番……っていっても、この時代には交番なんてないし…
「どうしよう……疲れちゃった…」
町に出てから一時間ほどずっと歩いている。
なのに、卵屋は一軒(いっけん)もみあたらない。
男用着物の重さで1.5倍ほど疲れが増え、足が棒のようだ。
そんな中。
ぐううううううっ。
千秋のお腹は、欲望のままに勇ましく鳴り響いた。
(静まれ!私のお腹!通行人に聞かれちゃうよ!!)
千秋の意思に反して、お腹は空腹をうったえてなり続ける。
お昼御飯まだだったもんなぁ。
斎藤さんがよそおってた白ご飯の一杯でも食べればよかった。
起きてからなにも飲まず食わずだよ…。
とぼとぼ千秋が歩いていると、着物をきた若い女性が和気あいあいとトークしながら、右奥の建物に並んでいた。
(なんだろう?人気のお店かな?)
千秋は興味本意で店の前まで行ってみる。
するとそこには。
「うわぁぁぁぁぁあ美味しそう!!!!!!」
その場手作りの、団子屋さんがあった。
人気なのだろう、女性達が並んでいたのはこの団子を食べるためらしい。
「三色団子にかしわち…それにみたらしだんごまで…!!!」
空腹をうったえる千秋のお腹が、限界を迎えた。
「こ、こ、近藤さんにはあとでお金返せばいいし…!皆もうお昼御飯の時間帯は終わっちゃってるからいま卵かっても意味ないし…!」
……千秋は、なんだかんだと自分に理由をつけて、
団子を買うために並んでいる女性客の最後尾列に並んだのであった。

