何も言わずに彼女の元を去り単身渡英した後、ミュージシャンとして充実した生活を送った。

二度と、日本に戻ることはない。

そう思いながら、10年が経った。

でも、仕事のため、再び日本へ戻ってきてしまった。


彼女が今、どこで何をしているのか。

もちろん、知らない。

誰かと結婚して、幸せに暮らしているのかも知れない。

自分のことなど、もう忘れてしまっていても、おかしくはない…。

そう思うと、確かめる勇気などなく、ただ記憶の中の18歳のままの、大好きだった彼女に夢の中で会うことだけが、彼に残された唯一の心の置き場だった。