だから、俺は授業が終わると同時に席を立った。


「太一!」

俺の斜め前に座る美佳も立ち上がり、俺に声をかけたけど、

俺の耳には入らなかった。

俺はすぐに、後ろを向き、片桐の席に近づいていった。


次の授業の準備をしていた片桐は、俺がそばに来る前に、席を立った。

そして、逃げるように、席から離れた。


「片桐!」

俺は慌てて、後を追った。

教室を飛び出していく2人を追いかけようとする美佳を、

総司が止めた。

「追わない方がいい」

その言葉に足を止めた美佳は、睨むように総司を見た。

「いやものを見るよ」

総司は珍しく…冷たい口調で言い放った。