「はあはあはあ…」

激しく息をしながら、裏口を通ったけど、

片桐はいない。


俺はキョロキョロと周りを探した。


すると…。


「なんだあ〜。元気そうじゃない。初日だから、しごかれているかと思ったのに」

後ろから声がして、俺が振り返ると、

笑顔の片桐がいた。


「はい」

そして、手に持っていた健康飲料水の缶を俺に向かって、投げた。

「音楽って、意外と体力使うのよねえ」

「あ、ありがとう」

受け取った缶を、俺は見つめた。


片桐は腕を組み、俺に近づいてきた。

「今日だけだからね。待ってるのは」

「ああ」

俺は缶を開けると、

「いただきます」

一気に飲み干した。