蝉がうるさくって、イライラする。
いや、イライラするのは、エアコンが無い、うちの家。


休日、家で過ごそうなんて無理があったなあ、なんて思い、どこか涼みに行こうと考えた。


考えたのち、ぽんっと電球マークを出してひらめいた。
“あいつ”の家に行こう。


私は汗だくで、スッピンのまま、そこに向かった。


家を出ると、3メートル先。
つまりはお隣さん。


インターフォンを鳴らし、応答を待つ。


『…はい?』


「あ、留貴? 私―」


そう言うと、何も言わずに、“ガチャッ”という音がする。


しばらくして、玄関のドアが開く。


「入れば?」


それだけ言って、ニコリとも笑わない彼。
相田留貴(あいだるき)。


13歳の、中学一年生だ。


私は、神崎(かんざき)まどか。
23歳の社会人。


「おっじゃまっしまーす」


そう言ってあがり込むと、涼しい風。


「おじさんとおばさんは?」


「出掛けてる」


なにー!家に一人でいんのに、エアコンかけてんのか。
お坊ちゃんは違うねえ。


と思いながら勝手にソファーに座った。