その後、桜は中国へ帰っていった。僕は、空港へ彼女を見送りに行ったが、他の知り合いたちと忙しく挨拶を交わす彼女と話すことはできなかった。ただ、アイコンタクトで、お互いを忘れない、ということを確認しあった。






僕は相変わらず「朋友」に行って、麻婆丼を食べている。桜がいない店内は、やはり寂しくて、僕はいつのまにか彼女の姿を目で探しては、桜がもういないことに気づく。


桜は、美しい。それは、はかない恋の象徴だ。


桜は、散る。だが、僕の桜は、未来を生き続け、決して散りはしないだろう。


桜吹雪の思い出と共に、僕の恋は埋もれ火のように心に残り続ける。桜は、僕と彼女が共有する、散らない記憶なのだ。


(了)