「ふうん。急にがば、の方か」
梅之介の眉間のしわが深くなった。
「……あのさ。あれ、僕だったかも知れない可能性だってあるんだぞ」
「え?」
「『まっつん』がたまたま眞人狙いだったから、眞人が行っただけだってこと!」
最後、声を少し荒げた梅之介は「なんだよ、もう」と言ってすたすたと歩き始めた。
早足で歩く梅之介を慌てて追いかける。
「ま、待って。待ってよ、梅之介! なんで急に怒るの? 私、梅之介にもちゃんと感謝してるよ? 参謀なんでしょう?」
「感謝とかじゃ、ないんだよ」
人ごみの中に梅之介が消えて行く。
小走りで追いかけるけれど、背中が小さくなっていく。
そんなつもりはなかったけれど、眞人さんだけに感謝しているような言い方をしてしまっていただろうか。
「ま、待ってってば! ねえ、梅之……、あ、すみません!」
人ごみを上手くすり抜けられず、人にぶつかる。
手にしていたバッグが落ちて、ポーチや財布が転がり出る。
「ああもう、私ってこんな時に!」
慌ててそれを拾いながら前方に視線を投げた。
もう、梅之介は先に行ってしまったに違いない。
はあ、とため息をつきながら荷物を拾っていると、見覚えのある靴が視界に入った。
顔を上げると、顔を顰めたままの梅之介が立っていた。
「もう! 何やってるんだよ、トロすぎだろ」
「ご、ごめん」
バッグを手に立ち上がる。
梅之介が、私の手を取った。熱い手にぎゅっと握りしめられる。
「見てらんないね。ほら、行くよ」
グイ、と引かれる。
怒ってはいるけれど、私を置いていくほどではない、のかな?
私が鈍くさいから、諦めているのかも知れない。
なんでもいいや。喧嘩するよりずっといい。
「ありがと」
えへへ、と笑うと、梅之介が目を見開いた。
手を離しかけたかと思えば、ぎゅっと握り直す。
ふいと顔を逸らし、「行くよ」と私の少し前を歩き出した。
「……お前さ、人に甘えるの、上手いよな」
「え? そうかな。そんなことないと思う」
さっきとは変わって、ゆっくりと歩いてくれる梅之介。
だけどぶっきらぼうな言い方で、まだ機嫌がよくないのかもしれないと思う。
「いや、ある。僕、こんなに面倒みよくないんだ」
「ふうん? そうかなあ。梅之介、なんだかんだ言って優しいけど」
「それは多分……おまえだからだよ」
「ん?」
「なんでもない」
それから、梅之介は黙ってサクサク歩き続けた。
どうしよう、もう一回謝ろうかなあ。
折角の外出が気まずく終わるのって嫌だもん。
そんなことを考えていると、梅之介がぽつんと言った。
「最初は多分、お前の境遇に同情したんだと思う。行くところが無い不安は、僕にもよく分かる」
「え……? うん」
「それからは、なんだろうな。お前、すごく喋りやすいし、いいやつだから」
「……えっと、それは、ありがとう」
梅之介が、私を褒めてくれている。それがすごく嬉しくて、ニコニコしてしまう。
「私も、梅之介のこと好きだよ」
精一杯の感謝の気持ちを込めて言う。梅之介は「そうかよ」と短く答えた。
梅之介の眉間のしわが深くなった。
「……あのさ。あれ、僕だったかも知れない可能性だってあるんだぞ」
「え?」
「『まっつん』がたまたま眞人狙いだったから、眞人が行っただけだってこと!」
最後、声を少し荒げた梅之介は「なんだよ、もう」と言ってすたすたと歩き始めた。
早足で歩く梅之介を慌てて追いかける。
「ま、待って。待ってよ、梅之介! なんで急に怒るの? 私、梅之介にもちゃんと感謝してるよ? 参謀なんでしょう?」
「感謝とかじゃ、ないんだよ」
人ごみの中に梅之介が消えて行く。
小走りで追いかけるけれど、背中が小さくなっていく。
そんなつもりはなかったけれど、眞人さんだけに感謝しているような言い方をしてしまっていただろうか。
「ま、待ってってば! ねえ、梅之……、あ、すみません!」
人ごみを上手くすり抜けられず、人にぶつかる。
手にしていたバッグが落ちて、ポーチや財布が転がり出る。
「ああもう、私ってこんな時に!」
慌ててそれを拾いながら前方に視線を投げた。
もう、梅之介は先に行ってしまったに違いない。
はあ、とため息をつきながら荷物を拾っていると、見覚えのある靴が視界に入った。
顔を上げると、顔を顰めたままの梅之介が立っていた。
「もう! 何やってるんだよ、トロすぎだろ」
「ご、ごめん」
バッグを手に立ち上がる。
梅之介が、私の手を取った。熱い手にぎゅっと握りしめられる。
「見てらんないね。ほら、行くよ」
グイ、と引かれる。
怒ってはいるけれど、私を置いていくほどではない、のかな?
私が鈍くさいから、諦めているのかも知れない。
なんでもいいや。喧嘩するよりずっといい。
「ありがと」
えへへ、と笑うと、梅之介が目を見開いた。
手を離しかけたかと思えば、ぎゅっと握り直す。
ふいと顔を逸らし、「行くよ」と私の少し前を歩き出した。
「……お前さ、人に甘えるの、上手いよな」
「え? そうかな。そんなことないと思う」
さっきとは変わって、ゆっくりと歩いてくれる梅之介。
だけどぶっきらぼうな言い方で、まだ機嫌がよくないのかもしれないと思う。
「いや、ある。僕、こんなに面倒みよくないんだ」
「ふうん? そうかなあ。梅之介、なんだかんだ言って優しいけど」
「それは多分……おまえだからだよ」
「ん?」
「なんでもない」
それから、梅之介は黙ってサクサク歩き続けた。
どうしよう、もう一回謝ろうかなあ。
折角の外出が気まずく終わるのって嫌だもん。
そんなことを考えていると、梅之介がぽつんと言った。
「最初は多分、お前の境遇に同情したんだと思う。行くところが無い不安は、僕にもよく分かる」
「え……? うん」
「それからは、なんだろうな。お前、すごく喋りやすいし、いいやつだから」
「……えっと、それは、ありがとう」
梅之介が、私を褒めてくれている。それがすごく嬉しくて、ニコニコしてしまう。
「私も、梅之介のこと好きだよ」
精一杯の感謝の気持ちを込めて言う。梅之介は「そうかよ」と短く答えた。



