『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「何だよ、不満かよ。勝手にやったこと怒ってんのか? だけど、お前はグズっぽいから演技とかできないだろ」

「……りがと」

「は?」

「ありがとう……」


怒るわけがないじゃない。
だって私、性格が悪いと言われようと、何と言われようと、嬉しい。
私を助けるためにとふたりが動いてくれたことが嬉しい。
溢れる涙を、手の甲で拭った。


「うわ、また泣くし! お前な、子供じゃないんだから、そのユルユルな涙腺、どうにかしろ! 」


梅之介がぷいと顔を逸らした。


「私、うれし、くて……。ありがと……」

「お、お前が毎日景気の悪い顔してるから、もう見たくなかったんだよ! あ! 嫌でも視界に入るから、迷惑だったってことだからな! それに、あの女のやり口が気に入らなかっただけだからな!」

「うん、うん」


泣きながら、コクコクと頷く。


「ほら、シロ」


眞人さんが、私にハンカチを差し出してくれた。それを受け取って顔を埋める。


「眞人さんも、あり、がとう。私、すごく、うれし……」


眞人さんの手が、頭に乗る。


「飼い犬だもんな。幸せになれるようにするのは、飼い主の務めだ」

「は? なにこいつ、そんな立場になったの⁉」

「ああ、変わってるよなー」


あはは、と私の頭を撫でながら笑う眞人さん。「信じられない」と梅之介が呆れたような呟きを漏らした。

ハンカチを握る手を取られ、顔を覗き込まれた。
涙で濡れた私の目と、眞人さんの目が近くでかち合う。


「もう泣くな」


にこ、と笑う顔が、優しい。
涙で濡れた世界で、それは唯一鮮やかに写った。
胸の鼓動が一瞬止まる。喉の奥がひゅ、と鳴った。


「腹、減っただろ。たまにはどこかに食いに行くか? それとも俺のつくったものがいいか?」


眞人さんの瞳の中に、私がいる。
私の瞳の中にも、彼がいるのだろう。


「……あー、と。僕焼肉がいいかな。 さすがに『四宮』では食べられないもん」

「ああ、いいな。シロ、焼き肉行くか? ビール飲んでもいいぞ」