『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

雑踏の中を並んで歩く。
動揺が収まらない私は眞人さんに支えられなければ満足に歩けない状態だった。


「え、えと、ええと……」


訊きたいことは色々あれど、どこから訊けばいいのか分からないし、満足に言葉を紡げる状態ではない。
眞人さんの顔を下から眺めては、口をパクパクすると言うことを繰り返した。


「眞人! サイコー!」


そんな時、大きな声で私たちに抱きついてきたのは、梅之介だった。


「すっごくよかったよ! あの女、言葉も出ないって感じだった。あー、すっきりした!」


あはは、と楽しそうに笑う梅之介は、目じりに滲んだ涙を拭って、私の顔を覗き込んだ。


「うわ、大丈夫かよ、シロ。意識がぶっ飛んでない? いつもより五割増しくらいで間の抜けた顔してるけど」

「な、な、なんで梅之介まで、ここにいるの⁉」


いつもの毒舌を浴びせられて、ようやく我に返る。この流れって、一体何なの!
梅之介が、ふふん、と悪戯っぽい顔をした。


「なんで、って。『まっつん撃退作戦』の参謀としてだよ」

「は?」

「お前があんまり情けないからさ、僕たちでどうにかしてやろうって思ったんだよ。
で、お前の話を総合して判断した『松子』なら、このやり方が一番クルんじゃないかなって。
で、ビンゴ! いや、眞人たちの背中を見るあの女のあの顔、僕しか見てないなんてなー」


ふたりの計画だった、ってこと?
眞人さんを見上げると、彼もまた楽しそうに笑っていた。


「がっつり参加したとはいえ、よくもまあ、こんなこと思いつくよな」

「眞人はさ、こんな計画は性格悪くないか、なんて言ってたんだ。だけど、お前があの女にされたこと考えたら手ぬるいくらいだと思うね」


ふん、と梅之介が鼻で笑う。それから、私を見て「ありがとうと言え」と言った。


「もう、お前を悩ますものは何もなくなったぞ。僕の予想だと、あの女はもう仕事に来ない。こんな赤っ恥かかされて、平然と出てこれないだろ。勿論、店にも来ない!」


ふふーん、と自慢げに胸を張る梅之介。
その誇らしげな顔をしばらく見つめる。
無言で見つめる私に気付いた梅之介が眉根を寄せた。