『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「お前さ」

「ん?」


梅之介の声に振り返る。
私の顔を見た梅之助は、何か言いたげに口を開閉させた。眉間には僅かにしわが刻まれている。


「どうかした?」

「あー……、いや」


私を見下ろした梅之介が、手を伸ばしてくる。右の頬をぶに、と摘ままれた。


「もお、なひよ」


む、と眉根を寄せる私を、梅之助は少しの間見つめた。


「なひよ。ブスとか言うんれひょ」


ぶ、と唇をとがらせてみせる。そんな私をじっと見ていた梅之介だったが、「なんだよ」と呟いた。


「ふえ? なんらよって、なによ?」


梅之介がぱっと手を離した。


「なんでもない。ブス」

「ふんだ、分かってるもん」


べ、と舌を出すと、梅之介はぷいと顔を逸らした。「まさかな」と小さく呟く。


「なに? まさかな、って」

「なんでもない。お前が女として研鑚が足りてないなって思っただけだよ。食事くらい、綺麗にとれ」

「あう。気をつけます」


確かに。子どもでもないんだから、もう少し気をつけよう。


「とにかく、ほら、さっさと皿洗え。溜まってるぞ」

「うあ、本当だ。はーい、がんばります」


洗い場に舞い戻ろうとした時、お店の方で来客の気配があった。


「あ、お客様みたいだよ」

「言われなくっても分かる」


私にはぶっきらぼうに言い、しかし「いらっしゃいませー」と爽やかな声音で梅之介が出て行く。
スイッチの切り替え具合は今日も良好のようだ。
その声を聞きながらスポンジを取った。