『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

ぎゅっとしがみ付く私の背中を、大きな手のひらが撫でる。


「どうだ、これで、寝られそうか?」

「え?」

「ここ最近、満足に寝てなかっただろう」


眞人さんの胸元からがば、と顔を上げた。


「何で知ってるんですか?」

「まあ、分かったから。で、寝られそうか?」


眞人さん、そんなに私の事気にかけてくれてたんだ。
そのことが、何よりも嬉しい。
はい! と返事をしそうになって、はたと噤む。しばし考え込んだ。


「シロ? どうした?」

「……寝られない」

「は?」

「寝られません! でも、眞人さんが一緒に寝てくれたら、寝られそうな気がする。ううん、絶対ぐっすり寝られます!」


あの心地よかった腕の中で、堂々と寝られる権利を得たのだ。これを逃さない手はない。
いや、酔っているからこそ言えているのだということは分かっている。
すごい量のジョッキを空にした記憶は残っているのだ。
さすがの私でも、素面でこれをお願いする勇気はない。

眞人さんが「馬鹿か」と声を洩らした。


「馬鹿じゃないです、私は晴れて飼い犬になったんだから、飼い主と一緒に寝たいと言ってもいいはずです」

「やっぱ馬鹿だろ。そんなことできるわけ……って、これ、この間のやりとりと一緒だな」


はあ、と眞人さんがため息をついた。


「一緒ですね。しかし、私の粘りは先日の比ではありません」

「……本当に馬鹿だな」


もう一度、眞人さんがため息をつく。それから、「シロの布団でいいのか」と言った。
はい! と笑顔で応えた私の心は、さっきまでのもやもやがすっかり晴れて、すっきりしていた。

そして、私は眞人さんの体にしっかりと抱きついて眠りに落ちた。
眞人さんは私を抱えるようにして、受け入れてくれた。
私は、ここしばらくの不眠具合が嘘のように、朝まで一度も目覚めることはなかった。