『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

『まっつん』は、仕事が休みの日はランチタイムにも顔を出すほど熱心に通っているのらしい。


「あからさまに眞人を狙ってる。顔に自信があるのか、他の女たちの敵意なんて完全無視。どれだけ睨まれても鼻で笑う感じ。あの女なら、シロの言う『松子』みたいなことやってのけるかもしれない」


梅之介が不愉快そうに鼻を鳴らす。


「世間って狭いよなあ。ていうか、その松子って女、よほどお前と因縁があるんだろうな」

「まだ、松子と決まったわけじゃないもん……」


箸置きをいじりながら呟く。だって、そんなことあって欲しくない。
私の大切な場所となったここまで、松子に侵されたくない。
ぽん、と頭に手が乗ったので顔を俯いていた顔を持ち上げると、眞人さんが向かい側から私の頭を撫でてくれた。


「まあ、とりあえず次に『まっつん』が来た時に確認しよう。シロが店に居るときだったら話は早いけど、不在の場合は、梅之介」

「はいはい、僕が探りを入れればいいんでしょ。大丈夫、それくらい余裕」


キラリン! と効果音が入ったかと錯覚するくらいに瞬間的に、梅之介が営業スマイルを浮かべた。


「まっつんさんの働いてるエステサロンって、なんてお店ですか? 僕、少し興味があって、詳しくお話訊きたいなって。これで全部解決じゃん」


声音までが、明るく爽やかなものに変わった。
さっきまでクソクソと語彙のないことを言っていた人とは思えない。
しかし、梅之介だったら上手く情報を引き出してくれそうだ。


「よ、よろしくお願い致します」


頭を下げると、梅之介が「仕方ないから、任せとけ」と頷いた。


「ま、とりあえず『まっつん』が『松子』かの確認が取れてから、これからのことを考えよう」


眞人さんの言葉に、「はい」と答えた声は自分でも分かるくらい、元気がなかった。