『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「で?」


私の横で黙々と食べていた梅之介が急に口を開いた。
どうやらその「で?」は私に向けられているらしいと気が付いたので、梅之介を見る。


「え、何が、『で?』なの?」

「何がじゃねえよ。最近のお前、どう見てもおかしいだろう。理由を言え」

「え。ええ?」


苛立ったように言う梅之介に、心底驚く。そんな私を見て、梅之介はふん、と鼻を鳴らした。


「気付かないとでも思ったか。それくらい、分かるんだよ。今日なんか、それで泣いたのを誤魔化したつもりか。誤魔化したいなら、もっとメイクの腕を磨け。ほら、言え」


梅之介から眞人さんに視線を移す。眞人さんもこっくりと頷いた。


「悩みがあるなら、何でも聴くぞ。言ってみな」


目の前の料理と、いつの間にか置かれた二杯目のジョッキを見る。
それから、ふたりの顔を交互に見た。
彼らはもしかして、私を心配して……?


「勘違いすんなよ? 大凶の余波を受けたくないから、対策を打とうとしてるだけだからな」


大葉とささみの天ぷらをぱくりと食べた梅之介が言う。
憎らしい言い方だけれど、それが本心ではないことくらいは、分かった。

胸がぎゅっと締め付けられて、苦しい。
だけどこの苦しさは、嫌じゃない。


「あ、ありがとぉ……」

「うあ! 泣くなよ馬鹿! 僕、そういうの苦手なんだ!」

「そういう言い方するからだろうが、クロ。ほら、言ってみろシロ。大凶なんて、あんなの意味ない事だから」


どうしてこんなにも、優しいのだろう。
溢れ出す涙を手の甲で何度も拭う。


「あーもう! ブスは泣くな! ブスの泣き顔なんて、ご飯が不味くなるだけなんだよ!」

「クロ、そんな言い方するなってさっきから言ってるだろ。ほら、これで涙拭け」

「いや眞人、それ台拭き……。仕方ないな、これ使えよブス!」

「ぶえ!」


梅之介に、ハンカチを顔に押し当てられる。ぐりぐりと顔を乱暴に拭われ、カエルのような声が出た。
汚れを拭うような勢いなんですけど。