『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「……って! 待って、白路!」


追いかけて来て、私の肩を掴んだのは真帆だった。


「びっくりした。あんたでもあんな風に言いかえせるのね。松子も達也も……って、あんた……」


私の顔を覗き込んだ真帆が言葉に詰まる。
私は、ぼろぼろと零れ落ちる涙を必死に拭っているところだった。


「真帆、真帆ぉ……」


足はがくがくと震えていたし、口からは嗚咽が溢れる。
最後まで笑顔を作れたなんて、奇跡だ。
真帆に抱きついた私はひいひいと泣いた。


「ふたりとも好きだったの。大事だったの。こんなことになるなんて、私、考えたこともなかった!」

「……うん」


真帆が私を抱き留め、背中を撫でてくれる。その温もりに身を預ける。


「ずっとずっと、みんなで笑っていられたらいいって思ってたの。なのに、なのに……!」


達也も松子も、私にはかけがえのない大切な人だったのだ。
どれだけ辛くても、いずれはふたりを祝福できたらいいとさえ思えるくらい、好きだった。


「酷いよ。どうしてせめて、幸せになってくれないの。悔しいけどおめでとうって私に言わせてくれないの。こんな悲しい終わり方って、ないよ……!」


こんなのってないよ。
私の想いも、これまでの思い出も、全部が踏み荒らされてしまった。
ぐしゃぐしゃになって、お終いだなんて。


「うん。うん、そうだね」


真帆が何度も頷いて、背中を撫でる。


「私、白路のこと好きだよ。みんなもきっとそう。ここまでされておいて、そういう風に言える白路だからこそ、みんなあんたが好きなんだよ。だから、大丈夫。白路はまだたくさんのものを持ってる」


雑踏の中、大きな声で泣く私を抱きしめる真帆。
そんな私たちを、通り過ぎる人たちは不思議そうに見たり、クスクス笑ったりした。

だけど真帆は、私が泣きやむまでずっと、抱きしめてくれた。