『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「はぁ⁉」


叫んだのは真帆だ。


「何ですかそれ!」

「あたしさー、最近ずっと、松子とシフト重なってたんだけどさ。休憩中に、すっげえいい男見つけたって自慢されたの。白路から盗った男どうすんのさって言ったら、とりあえずキープしてますーって。いやー、こえーわ、今の若いオンナ」


袋から唐揚げ弁当を取り出しながら、結川さんが言う。


「あの子かわいいし、ターゲットには鬼攻めするらしいし、すぐに次の男に乗り換えるんじゃないかな。つーか、白路のこと考えろって話だよね。盗ったって聞いた時は、まあそんなこともあるのかなー程度にしか考えてなかったんだけどさ。もう次に乗り換えっていうのには、正直呆れた」

「は……」


さすがの真帆も、言葉が出てこないらしい。口を開けては閉じ、を繰り返していた。


「あれ、相当な性悪だわ。もうひと騒動あるかもしれないから、気を付けなね、白路」


もぐもぐと食べながら言う結川さんに「はあ、どうも」と頭を下げる。
気を付ける、と言われても、私にはもうなにも対処することはない。
全て、終わってしまったことだ。
松子と達也がどうなろうと、私には関りあいのないことと思うしかない。

だけど、何も感じないかと言われたら嘘になる。
あんなに乱暴に奪って行ったのだから、せめて幸せになって欲しい。
そうでなくては、私の悲しみも涙も全部、意味がなくなってしまう……。

それから僅か数日後のことだった。松子がカフェだかバーだかのマスターに一目ぼれして、店に通い詰めているという話を別のスタッフから聞いた。


「いい加減にした方がいいよって忠告したんだけど、今度は本気です、だって。みんな呆れてる。武里チーフには、あたしたちからも松子の早い移動を頼んでおくから」

「ありが、とう……」


そんな日に限って、松子とシフトが重なっている。
嫌でも視界に姿が入ることに、気分が滅入る。
あの子はどうして、こんなことをしておいて平気で笑っていられるんだろう……。