「こんなところで四宮さんを見つけられるなんて、思いもよらなかった! お願いです、戻って来て下さい!」
「だから、嫌だと言ってるでしょう。俺はもう、あそことは関わりを持ちたくないんだ」
「そんなこと、言わないでください。華蔵(はなくら)には、四宮さんが必要なんですよ」
話の流れが見えないが、男の人は必死に眞人さんに縋っていた。
眞人さんは彼からどうにかして逃げ出したいのか、後ずさりをしている。
「無理ですって。俺はもう戻りません。分かって下さいよ、浦部(うらべ)さん」
ああもう困ったなあ、と眞人さんが頭をがりがりと掻いた。
そんな眞人さんに、浦部と呼ばれた男性は尚も言いつのった。
「お願いです! 小紅(こべに)さんも、待ってます!」
その時、眞人さんの顔が強張った。表情が消え、彼を取り巻く温度がすっと冷えていった気がした。
「その名前、聞きたくなかったですね。よくその名前を出せますね」
告白を断った時と同じ、いやそれ以上に冷たい声音。
自分に向けられているわけでもないのに、足が竦んだ。
……眞人さんが、怒った。
「四宮さん、まだ怒ってるんでしょう。それは分かります。でも、小紅さんもあれから必死で四宮さんを探していたんです。見ているこちらがかわいそうになる位、必死に!」
「探して……? 意味が分かりませんね。俺はもうあいつとは何の関係もないし、何かしらの関係を築くつもりもない」
声音に、嫌な熱が入る。油が煮立つような、嫌な温度だ。
こんなにも分かりやすく眞人さんが怒っているのに、彼はまだ眞人さんに言葉を重ねる。
「すごく反省して、後悔していらっしゃるんです! だから、」
「だから赦せと? 出来るわけないでしょう!」
掴んだ手を振り払った眞人さんだったが、浦部さんはそれでも縋ろうとする。
それを阻んだのは、梅之介だった。
「ハイハイ、すいませーん。ええと、あなた眞人のお知り合いですか?」
ふたりの間に割って入り、営業スマイルを浮かべてみせる。
急に現れた梅之介に驚いたのか、浦部さんがぱちぱちと瞬きをした。
「え? あ、はい」
「そうなんですか。えっとですね、今三人で楽しい初詣の最中なんです。これ以上邪魔しないで貰えませんか。それに、眞人がすごく嫌がってる。だから、もう話しかけないでください」
さらさらと流れるように言った梅之介は、眞人さんの手を掴んだ。
「じゃ、そういうことで失礼します」
言い捨てて、ずんずんと歩いて行く梅之介。
引っ張られるようにして、眞人さんが連れて行かれる。
この状況に全くついて行けずにいた私は、浦部さんと共にそれを呆然と見つめていたのだったが、人ごみの中にふたりの背中が掻き消えたのを見てようやくハッとした。
「わ、ま、待って! あ、と」
慌てて追いかけようとして、浦部さんを振り返る。彼もまた、ふたりの消えた方向を呆然と見つめていた。
「じゃ、じゃあ失礼します」
「あ、待って!」
駆け出す私の背中に呼び止める声がかかったけれど、それに答えることもなく私はふたりを追いかけて走った。
「だから、嫌だと言ってるでしょう。俺はもう、あそことは関わりを持ちたくないんだ」
「そんなこと、言わないでください。華蔵(はなくら)には、四宮さんが必要なんですよ」
話の流れが見えないが、男の人は必死に眞人さんに縋っていた。
眞人さんは彼からどうにかして逃げ出したいのか、後ずさりをしている。
「無理ですって。俺はもう戻りません。分かって下さいよ、浦部(うらべ)さん」
ああもう困ったなあ、と眞人さんが頭をがりがりと掻いた。
そんな眞人さんに、浦部と呼ばれた男性は尚も言いつのった。
「お願いです! 小紅(こべに)さんも、待ってます!」
その時、眞人さんの顔が強張った。表情が消え、彼を取り巻く温度がすっと冷えていった気がした。
「その名前、聞きたくなかったですね。よくその名前を出せますね」
告白を断った時と同じ、いやそれ以上に冷たい声音。
自分に向けられているわけでもないのに、足が竦んだ。
……眞人さんが、怒った。
「四宮さん、まだ怒ってるんでしょう。それは分かります。でも、小紅さんもあれから必死で四宮さんを探していたんです。見ているこちらがかわいそうになる位、必死に!」
「探して……? 意味が分かりませんね。俺はもうあいつとは何の関係もないし、何かしらの関係を築くつもりもない」
声音に、嫌な熱が入る。油が煮立つような、嫌な温度だ。
こんなにも分かりやすく眞人さんが怒っているのに、彼はまだ眞人さんに言葉を重ねる。
「すごく反省して、後悔していらっしゃるんです! だから、」
「だから赦せと? 出来るわけないでしょう!」
掴んだ手を振り払った眞人さんだったが、浦部さんはそれでも縋ろうとする。
それを阻んだのは、梅之介だった。
「ハイハイ、すいませーん。ええと、あなた眞人のお知り合いですか?」
ふたりの間に割って入り、営業スマイルを浮かべてみせる。
急に現れた梅之介に驚いたのか、浦部さんがぱちぱちと瞬きをした。
「え? あ、はい」
「そうなんですか。えっとですね、今三人で楽しい初詣の最中なんです。これ以上邪魔しないで貰えませんか。それに、眞人がすごく嫌がってる。だから、もう話しかけないでください」
さらさらと流れるように言った梅之介は、眞人さんの手を掴んだ。
「じゃ、そういうことで失礼します」
言い捨てて、ずんずんと歩いて行く梅之介。
引っ張られるようにして、眞人さんが連れて行かれる。
この状況に全くついて行けずにいた私は、浦部さんと共にそれを呆然と見つめていたのだったが、人ごみの中にふたりの背中が掻き消えたのを見てようやくハッとした。
「わ、ま、待って! あ、と」
慌てて追いかけようとして、浦部さんを振り返る。彼もまた、ふたりの消えた方向を呆然と見つめていた。
「じゃ、じゃあ失礼します」
「あ、待って!」
駆け出す私の背中に呼び止める声がかかったけれど、それに答えることもなく私はふたりを追いかけて走った。



