『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

「……すげえな、お前。『大凶』だなんて、僕初めて見た」

「あ、あうう」


真剣にお祈りしたそのすぐあとに引いたおみくじが、人生初の『大凶』というのは、如何なものだろうか。


「一体、何を願ったんだよ。もう、絶対叶わないよ」

「あ、あうう」


涙目で梅之介を見ると、「どうせ、大金欲しいとか下衆い欲望だろ」と鼻で笑う。


「違うもん! 梅之介と一緒にしないでよね!」

「はぁ? 僕は今まで初詣では世界平和しか願わないんだよ」

「うわなにそれ。そんな願い事したって今までの悪事は帳消しになんないんだからね」

「そ、そんなんじゃねえし! ていうか、悪事ってなんだよ、バカ!」


ぷんかぷんかと言い争いをしていると、私の手から握りつぶされたおみくじを引き抜かれた。
クスクス笑っている眞人さんが、「一番高いところに結んどこうな」と言う。


「今が一番悪いってことは、後は上昇していくしかないってことだろ。悪くない」


大きな梅の木の枝のひとつに結わえてくれる眞人さんを拝む。


「ま、眞人さん……優しい。梅之介に、その優しさの五分の一でもあれば……」

「むか。うるさいよ、ファンキー女。さあ、そろそろ行こうよ。いか焼き食べたいんだ、僕」

「あ! 私も!」


境内の中にまで漂ってくるいか焼きの香りは、抗いがたい魅力がある。
行こう行こうと連れ立って歩く私たちの後ろを、眞人さんは保護者のようについてきた。


「いか焼きはさ、この濃い味がいいよねえ。あー、ビール欲しい!」

「お前、すぐビールな。昨日も年越しビールとか言って飲んでたくせに、まだ飲むのかよ」

「梅之介だって飲んでたじゃん。あ、タレがこぼれそうだから気を付けて」

「うわ、やべ。あれ、眞人は?」


露店の前で、いか焼きにかじりついていると、梅之介が辺りを見渡した。


「え、いないの? って、あそこにいるじゃん。おーい! 眞人さん、こっ、ち」


手を振って呼びかけようとしたのを、止めた。

眞人さんは、知らない男の人と険しい顔をして話をしていたのだ。
眞人さんよりいくつか年上だろうか。
恰幅の良い男性は、眞人さんの着物の袖を掴んで何か必死に言っている。
眞人さんは困ったように眉尻を下げ、彼を振り払おうとしていた。


「喧嘩、とは様子が少し違うな。どうしたんだろ、眞人。シロ、行くぞ」

「あ、うん!」


慌てて眞人さんの元に駆け寄った。