『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

――そんな人嫌いのくせに、こうして私に優しくしてくれるんだよねえ。


しっかりと繋がれた手を見下ろしながら思う。
私と梅之介には、眞人さんは決して冷たい目を向けたりしない。
いつもニコニコ笑っているし、気にかけてくれる。

梅之介は『飼い犬』というポジションにいるから、犬として大事にしているのかもしれない(それも、どうかと思うのだけれど)。
一年以上の付き合いがあるわけだし、その中で親しくなったのだろうとも思う。


だけど、私は? 私は一体何なの?


梅之介同様拾われた身だから、私も『飼い犬』ポジにいるのかなと思う。
あんなに強引な出会いをしたのだから、彼に拒絶する間を与えなかったのかもしれないとも思う。
事情が事情なだけに、同情を買ったというのもきっと大きいんだろう。

まあ、『飼い犬』であっても別に問題ないんだけどさ。今って完全に餌付けされちゃってるし、私。
夕飯どきなんて、自分のお尻に尻尾が生えてて、ぶんぶん振ってる錯覚もしてるし。

私って一応人間の女なわけだし、そんなにすんなりと『犬』に納まっていいわけ? と思わなくもない。
だけど、『女』としてカテゴライズされた途端冷たく拒絶されるかもと考えると、それは『すごく嫌』なのだ。
拒絶されることなく、今のままでいられるなら、犬でも何でもいい。それが今の私の本音だ。

私が彼にとってどういう位置かなんて(知りたいけれど)この際どうでもいい。

でも、どうして眞人さんが人を嫌うのか、その理由はいつか知りたい。
だって、せっかくこうして出会って、一緒に生活しているんだから。
まだ数日だけれど、ふたりとの生活は思いの外楽しくて居心地がいい。
だから、もっと相手のことをよく知りたいと、思う。


「シロ。やっと本堂が見えて来たぞ」


考え込んでいる間に、列の先頭近くにまで来ていたらしい。眞人さんに言われてハッとする。


「さ、お参りだ」

「はい!」


梅之介と眞人さんに挟まれるようにして一列に並ぶ。お賽銭を投げて、両手を合わせる。
目と閉じてお願いしたことは、『これからの三人の生活が楽しくて幸せなものになりますように』だった。


どうか、叶いますように。