「シロ、どうした。人ごみに酔ったか?」
ひょいと顔を覗き込んできたのは眞人さんだ。
眞人さんも、前述の通り今日は着物である。
黒の角袖コートにえんじ色のマフラーが良く似合っていて、とにかくもう、素敵の一言に尽きる。
梅之介とはまた違う良さがある。大人の色気とでもいうのだろうか。
梅之助と違って着慣れていないのか、仕草は荒めだけれど、それがまたいいような気がする。
そんな彼もまた、さっきから女性たちの視線を集めていた。
まあ、当然だろう。
多少見慣れてきた私だって、うっかりしたら彼らに視線を奪われてしまうのだから。
そんな美麗着物男性二人と一緒に歩いているカリフラワー頭の自分が酷く恥ずかしい存在のような気がしてきているけど、きっと気のせい。そう、気のせいだ。
「いえ、大丈夫です」
「そうか?」
ならいいけど、と前方に視線を向けた眞人さんの顔をそっと窺い見て、それからちゃんと繋がれた手に視線を落とした。
この人も、不思議なんだよなあ。
あの家に住んでまだ数日。
少しずつ眞人さんについて知ることが増えた。
例えば、私と同じで両親を早くに亡くしていること。
祖父母と共に生活していたが共に亡くなり、家を改装して『四宮』を開店させたことなんかは、彼の口から聞いた。
幼い頃から料理が好きで、料理人に憧れていたことも。
だけど、謎なのはそういう生い立ちのようなものではなくて。
なんというか、『四宮眞人』という人がどうにも掴みどころがないのだ。
人嫌いという梅之介の言葉は、本当だった。
彼は、接客中も笑顔を見せることがついぞないのだ。
丁寧な応対で、決して無礼ではない。
しかし、口角を少しも持ち上げないし、必要以上の会話をしない。どんな人であっても。
それでいて、厨房に戻ってくると、私に向かって笑顔で「今日の賄は小海老のかき揚げ丼にしようか」なんて言う。
その変化たるや、二重人格梅之介のそれと互角であると私は思う。
ひょいと顔を覗き込んできたのは眞人さんだ。
眞人さんも、前述の通り今日は着物である。
黒の角袖コートにえんじ色のマフラーが良く似合っていて、とにかくもう、素敵の一言に尽きる。
梅之介とはまた違う良さがある。大人の色気とでもいうのだろうか。
梅之助と違って着慣れていないのか、仕草は荒めだけれど、それがまたいいような気がする。
そんな彼もまた、さっきから女性たちの視線を集めていた。
まあ、当然だろう。
多少見慣れてきた私だって、うっかりしたら彼らに視線を奪われてしまうのだから。
そんな美麗着物男性二人と一緒に歩いているカリフラワー頭の自分が酷く恥ずかしい存在のような気がしてきているけど、きっと気のせい。そう、気のせいだ。
「いえ、大丈夫です」
「そうか?」
ならいいけど、と前方に視線を向けた眞人さんの顔をそっと窺い見て、それからちゃんと繋がれた手に視線を落とした。
この人も、不思議なんだよなあ。
あの家に住んでまだ数日。
少しずつ眞人さんについて知ることが増えた。
例えば、私と同じで両親を早くに亡くしていること。
祖父母と共に生活していたが共に亡くなり、家を改装して『四宮』を開店させたことなんかは、彼の口から聞いた。
幼い頃から料理が好きで、料理人に憧れていたことも。
だけど、謎なのはそういう生い立ちのようなものではなくて。
なんというか、『四宮眞人』という人がどうにも掴みどころがないのだ。
人嫌いという梅之介の言葉は、本当だった。
彼は、接客中も笑顔を見せることがついぞないのだ。
丁寧な応対で、決して無礼ではない。
しかし、口角を少しも持ち上げないし、必要以上の会話をしない。どんな人であっても。
それでいて、厨房に戻ってくると、私に向かって笑顔で「今日の賄は小海老のかき揚げ丼にしようか」なんて言う。
その変化たるや、二重人格梅之介のそれと互角であると私は思う。



