*
「連絡がないかと思えば、もう住むところを決めたってどういうこと」
「ごめん、真帆。でも、すごくいい人なの。超好条件なの」
「ちゃんと説明してごらんなさい。あんたの為に精一杯の食事を用意してたっていうのに待ちぼうけをくらった私を納得させなきゃ、ひどいわよ」
翌日、私は真帆にこっぴどく叱られていた。
泊まると言っておいて一向に姿を現さない私を心配してくれていたのだから、それも当然だ。
土下座せんばかりの勢いで謝罪をし、事情を話す。
それから、真帆のお気に入りの店でご飯を驕るということでようやく許していただいた。
婚約のお祝いも兼ねて、婚約者となった彼氏もどうぞと言うと、真帆はようやく機嫌を直してくれた。
けれど、眞人さんのことに話が及ぶと顔を顰めたのだった。
「小料理屋の店主ってところはいいとして……三十前後の男ぉ? それって、問題案件じゃないの。結婚は?」
「してない。独身です」
「だったら完全なる大問題案件です。あんた、手をつけられたんじゃないでしょうね。達也さんにフラれて、その寂しさの余り……」
「ない、ないです。まっさらです」
般若のような形相になっていく真帆に、慌てて言う。
同じ布団で寝てはいたけれど、何もやましいことはしてないのだから、報告する必要はない。多分。
「今のところはってことじゃないの? あんたって今は髪型こそアレだけど、見られる顔してるし」
「大丈夫。そんなこと絶対しなさそうだもん」
酔ってヘロヘロの私と一緒に寝ていても何もしなかったのだから、大丈夫だ。
それに梅之介の言葉を信じるなら、眞人さんがこれから先私に何か仕掛けてくると言うことはまずないだろう。
「すごくいい人なの。真帆もきっと、眞人さんを見たら安心すると思う」
「会って間もないんでしょ? そうしてそんな風に断言できるのよ」
「まあ、そうだけど。でも、私は眞人さんにとって犬みたいなもんだから」
クスリと笑って言うと、真帆が不思議そうに瞬きする。
「意味わかんない」
「ふふ。とにかく、そんな心配はいらないと思う。ほら、これも、眞人さんが作ってくれたんだよ」
時間は、昼休みだ。
真帆と共に休憩に上がった私は、眞人さん手作りのお弁当を食べていた。
二食という話だったのに、これじゃ三食になっちゃいますよと言った私に、『作らない日もあるだろうから、気にするな』と彼は出勤前にお弁当をくれたのだった。
私には少し大きめのわっぱ弁当には、出し巻き卵やブリの西京焼きなどが品よく詰められている。
ああ、美味しい。これ、余裕で完食できそう。
「みて、すごく美味しそうでしょ? 味も最高なの」
お弁当を覗き込んだ真帆が「確かに」と頷いて出し巻き卵を一切れ摘み上げた。
ぱくりと口に入れてもぐもぐする。
「……美味しい」
「でしょ⁉ こんなに美味しいお弁当を頼みもしないのに作ってくれるんだもん、すっごくいい人でしょ!」
「あんた……食べ物につられたんじゃないでしょうね」
「あう。な、ないよ」
食べ物につられたというより、匂いにつられて出会いましたとは、さすがに恥ずかしくて言えない。
「連絡がないかと思えば、もう住むところを決めたってどういうこと」
「ごめん、真帆。でも、すごくいい人なの。超好条件なの」
「ちゃんと説明してごらんなさい。あんたの為に精一杯の食事を用意してたっていうのに待ちぼうけをくらった私を納得させなきゃ、ひどいわよ」
翌日、私は真帆にこっぴどく叱られていた。
泊まると言っておいて一向に姿を現さない私を心配してくれていたのだから、それも当然だ。
土下座せんばかりの勢いで謝罪をし、事情を話す。
それから、真帆のお気に入りの店でご飯を驕るということでようやく許していただいた。
婚約のお祝いも兼ねて、婚約者となった彼氏もどうぞと言うと、真帆はようやく機嫌を直してくれた。
けれど、眞人さんのことに話が及ぶと顔を顰めたのだった。
「小料理屋の店主ってところはいいとして……三十前後の男ぉ? それって、問題案件じゃないの。結婚は?」
「してない。独身です」
「だったら完全なる大問題案件です。あんた、手をつけられたんじゃないでしょうね。達也さんにフラれて、その寂しさの余り……」
「ない、ないです。まっさらです」
般若のような形相になっていく真帆に、慌てて言う。
同じ布団で寝てはいたけれど、何もやましいことはしてないのだから、報告する必要はない。多分。
「今のところはってことじゃないの? あんたって今は髪型こそアレだけど、見られる顔してるし」
「大丈夫。そんなこと絶対しなさそうだもん」
酔ってヘロヘロの私と一緒に寝ていても何もしなかったのだから、大丈夫だ。
それに梅之介の言葉を信じるなら、眞人さんがこれから先私に何か仕掛けてくると言うことはまずないだろう。
「すごくいい人なの。真帆もきっと、眞人さんを見たら安心すると思う」
「会って間もないんでしょ? そうしてそんな風に断言できるのよ」
「まあ、そうだけど。でも、私は眞人さんにとって犬みたいなもんだから」
クスリと笑って言うと、真帆が不思議そうに瞬きする。
「意味わかんない」
「ふふ。とにかく、そんな心配はいらないと思う。ほら、これも、眞人さんが作ってくれたんだよ」
時間は、昼休みだ。
真帆と共に休憩に上がった私は、眞人さん手作りのお弁当を食べていた。
二食という話だったのに、これじゃ三食になっちゃいますよと言った私に、『作らない日もあるだろうから、気にするな』と彼は出勤前にお弁当をくれたのだった。
私には少し大きめのわっぱ弁当には、出し巻き卵やブリの西京焼きなどが品よく詰められている。
ああ、美味しい。これ、余裕で完食できそう。
「みて、すごく美味しそうでしょ? 味も最高なの」
お弁当を覗き込んだ真帆が「確かに」と頷いて出し巻き卵を一切れ摘み上げた。
ぱくりと口に入れてもぐもぐする。
「……美味しい」
「でしょ⁉ こんなに美味しいお弁当を頼みもしないのに作ってくれるんだもん、すっごくいい人でしょ!」
「あんた……食べ物につられたんじゃないでしょうね」
「あう。な、ないよ」
食べ物につられたというより、匂いにつられて出会いましたとは、さすがに恥ずかしくて言えない。



