『好き』と鳴くから首輪をちょうだい

言い合いをしていると、それを遮るように大きな笑い声が響いた。
見れば、眞人さんが楽しそうに体を折って笑っている。


「面白い。じゃあ、ウチに住むってことでいいの?」

「え」


梅之介と言い合いしている流れで、ついうっかり住むって言ってしまってた。


「料理は俺が担当。クロは店の手伝いと掃除が担当。シロは皿洗い、かな。バアちゃん、毎日通うのはきついって最近零してたから、そうしてくれるとすごく助かる」


にっこりと眞人さんが笑った。
その笑顔はなんというか、破壊力がありすぎる。
こんな美形に笑いかけられて動揺せずにいられる女がいるだろうか、いやいない。


「お、お願いします」


気付けばそう言っていた。
だって、どう考えてみても、いいお話なのだ。


「えっと、その。家賃は三万円払います。引越し資金が溜まるまででいいです。そしたら、出て行きますので、その」


もごもごと言うと、眞人さんが「うん、それでいいよ」と頷いた。


「じゃあそれまで、よろしく。部屋は昨日通したところでいい? 二階にも一応空き部屋があるけ」

「絶対やだ! この女の気配を感じたら満足に寝られない」


眞人さんの声を遮って梅之介が言う。


「あの部屋でいいです。私も、梅之介に夜這いかけられたら嫌なので」

「きー! 馬鹿! お前すげえ馬っ鹿! 絶対ないし!」


梅之介は、腹を立てると「きー!」と声を上げるらしい。
しかも、子どものように地団太を踏んで言うものだから、思わず笑ってしまう。犬と言うより子ザルだ。


「何だよ、笑ってんなよ!」

「だってちょっとかわいいんだもん。子どもみたい」


遠慮して子ザルとは言わずにいてあげたのに、それでも不満だったらしい。
梅之介が顔を歪めた。「もう寝る!」と言い捨てて、彼は足音も荒く住居部分の方へ消えて行った。